2019.2.20
過敏性腸症候群(IBS)
お腹の痛みや調子が悪く、それと関連して変わる便秘や下痢などのお通じの異常(排便回数や便の形の異常)が数か月以上続く状態のときに最も考えられる病気です。もちろん、大腸に腫瘍や炎症などの病気がないことが前提になります。
およそ10%程度の人がこの病気であるといわれている、よくある病気です。女性の方が多く、年齢とともに減ってくることがわかっています。命に関わる病気ではありませんが、お腹の痛み、便秘・下痢、不安などの症状のために日常生活に支障をきたすことが少なくありません。参考までに医療の世界で使用している診断基準を下に示します。
IBSの基準診断(ローマⅢ基準)
・最近3か月の間に、月に3回以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、
下記の2項目以上の特徴を示す
- 排便によって症状がやわらぐ
- 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
- 症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
IBSはどうして起こるのか?
腸(小腸や大腸)は食べ物を消化・吸収するだけでなく、不要なものを便として体の外に排出してくれます。そのためには、食べ物を肛門方向に移動させるための腸の収縮運動と腸の変化を感じとる知覚機能が必要です。運動や知覚は脳と腸の間の情報交換により制御されています。ストレスによって不安状態になると腸の収縮運動が激しくなり、また、痛みを感じやすい知覚過敏状態になります。この状態が強いことがIBSの特徴です。実際に、大腸に風船を入れて膨らませて刺激すると、健康な人は強く刺激しないと腹痛を感じないのに対し、IBSの患者さんでは弱い刺激で腹痛が起こってしまいます。IBSになる原因はわかっていません。しかし、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった場合、回復後にIBSになりやすいことが知られています。感染によって腸に炎症が起き、腸の粘膜が弱くなるだけではなく、私たちの腸にいる腸内細菌の変化も加わり、運動と知覚機能が敏感になるためです。近年はIBSでみられる腸や脳の機能異常を起こす物質を見つける研究、遺伝子の研究や機能的MRI検査などを用いた脳機能画像の研究が盛んです。原因が明らかにされる日が楽しみです。
日本消化器病学会ガイドラインより引用