2018.01.09
「ヒルドイドを含むヘパリン類似物質製剤に制限か」
中央社会保険医療協議会総会はヒルドイドなどのヘパリン類似物質の適正使用をめぐり議論、健康保険組合連合会理事は、「皮膚乾燥症で、他の外用薬、抗ヒスタミン薬と同時処方されていない場合には保険適用から除外すべきだ」と提案、一方で日本医師会常任理事の松本氏は、皮膚乾燥症であっても悪化防止のためにヒルドイドを使用することはあり得るとし、「学会やメーカーから注意喚起がなされており、しばらく様子をみるべきだ」と主張した。
松本氏は、「背景についてはさらに調査をしてもらいたい」とも要望。支払側からも、全国健康保険協会理事の吉森氏が、「美容目的の使用が言われているが、なぜこのような処方がなされているのか、全く理解ができない。安易に使用制限するのではなく、原因を明確にして対策を練るべきではないか。もし、使用制限の必要性を認めた場合には、どのように制限するかを検討すべき」と指摘した。
ヒルドイドをめぐっては、美容目的と想定される使用が一般メディアでも問題視され、適正使用を求める声が上がっているが、2018年度診療報酬改定で何らかの対策を実施するかどうかについて結論は出ず、改めて検討することになる見通し。
ヒルドイド問題の発端は、健保連の調査。2014年10月から2016年9月の2年間で、保湿剤が1種類以上外来で処方された医科、調剤のレセプトデータを分析した結果、「ヘパリン類似物質のみの処方であり、かつ皮膚科系の傷病名が皮膚乾燥症のみ」のレセプトにおける処方額は約10億円(2年分)で、全国では年間93億円程度になると推計した。幸野氏はこの調査結果を説明、特に2015年から2016年にかけて女性の使用量が男性に比べて5倍以上増加していることなどから、「一気に増加したのは、女性雑誌やWEBなどで取り上げられ、美容目的で有効とされたからではないかと容易に想定できる」と指摘し、ヘパリン類似物質単独使用を保険適用から除外するよう要望した。これに対し、皮膚科医である松本氏は、「効能効果に準拠して適正使用をすることが必要」との前提の上で、皮膚乾燥症は、皮脂欠乏症であるとし、「皮膚のバリア機能が障害され生じる皮膚の疾患。その悪化により、患者のQOLは阻害されるとともに、医療費の増加につながってくる。ステロイド外用薬を使用する前段階として、保湿剤を使うことは治療としてあり得る」と説明。さらに「全身のアトピー性皮膚炎など、大量の保湿剤が必要になる患者もいることから、このような方に不利益が生じないようにしてもらいたい」と求めた。
幸野氏は、「一定の必要性があることは分かるが、2015年から2016年に使用量が急激に増加しているのは、別の根拠がないと説明が付かない」と譲らなかったが、松本氏は、女性の方が男性よりも保湿などに敏感に対応しているなどとし、「背景については、さらに調査をしてもらいたい」と厚労省に求めた。
これまでも医療用医薬品の数量制限については、平成24年に単なる栄養補給目的でのビタミン剤の投与は、医療保険の対象外としたほか、平成28年改定では湿布薬について1処方箋につき原則70枚までの処方制限を行うなど、過剰な投与などが認められる医薬品については、詳細な条件を設定することなどの措置を講じている。
メディウォッチより引用