2017.12.20
「関節に痛みの発作が起こる「偽痛風」とは?」
「偽痛風」と呼ばれる病気は、正式にはピロリン酸カルシウム結晶沈着症(CPPD)という病気で、ピロリン酸カルシウムという物質の結晶が関節の中に少しずつたまり、炎症(関節炎)を引き起こすものです。
痛風では、足の親指のつけ根の関節に、「風が吹いても痛い」といわれる激痛発作が生じることが知られていますが、膝や手指の関節にも起こります。一方、CPPDではよく似た痛みの発作が、主に膝や手の関節に現れます。急に痛風のような激しい痛みに襲われることから、偽痛風と呼ばれています。
痛風の多くは男性ですが、CPPDは男女差がなく、60歳以上の高齢者に多くみられます。60歳の有病率は7~10%、65~75歳で10~15%、85歳以上で30~50%にものぼり、多くの高齢者が経験します。加齢が原因の一つとして挙げられますが、詳しい発生原因はわかっていません。55歳以下の患者では、代謝異常や遺伝などが要因として考えられています。
CPPDで関節にたまるピロリン酸カルシウムとは、ピロリン酸という物質とカルシウムが結びついたもの。ピロリン酸は肝臓や軟骨でつくられ、軟骨などが石灰化(カルシウムが沈着する状態)するのを防いでいますが、過剰になると石灰化を進めてしまうことがわかっています。CPPDは病態によっていくつかのタイプに分けられます。もっとも多いのが約50%を占める無症候性タイプで、このタイプでは軟骨の石灰化は見られますが、特に症状はありません。治療の必要はなく、経過観察がすすめられます。
痛風のように痛みの発作が現れるものが「偽痛風」と呼ばれるタイプで、約25%を占めます。膝にもっとも起こりやすく、その他、手、足、肩、肘、股関節などにもみられます。痛みの強い発作時と、おさまると痛みがまったくない時期がある間欠性が特徴です。
関節に結晶が沈着したために「変形性関節症」を伴うタイプもあります。痛みのないタイプと、一過性の激しい痛みが起こるものに分けられます。その他、複数の関節に1か月から数か月にわたって炎症が続く、偽痛風リウマチといわれるタイプもあります。
残念ながら、現時点では根治的な治療法はありません。痛みや炎症を抑える対症療法を中心に行います。消炎鎮痛薬の服用、痛む関節に直接ステロイド薬を注入する、ステロイド薬を内服するなどが、痛みの程度によって段階的に用いられます。また、関節にたまった水を抜く穿刺・排液も症状の緩和に有効です。しかし、これらの治療で症状の改善がみられない場合は、外科的な治療法も考慮されます。結晶を除去する関節内の洗浄や、関節の変形が進んでいるケースには人工関節置換術も行われます。
CPPDは膝などの変形性関節症(OA)との密接な関係が指摘されています。CPPDとOAは必ずしも併発するわけではありませんが、OAがあると、CPPDによって関節の破壊などの症状が促進されることがわかっています。痛風のような痛みの発作が起こったら、まず大切なのは、痛風や関節リウマチ、変形性関節症などとの鑑別診断です。また、症状がおさまった後も、関節の変化や症状の経過を、しっかり観察していく必要があります。
毎日新聞医療プレミア引用