新型コロナウイルス感染者数の増加に伴い、学校や保育園における集団感染 が各地で報告されるようになってきた。

日本小児科学会予防接種・感染症対 策委員会が 5 月に発表した「小児の新型コロナ感染症に関する医学的知見の 現状」では、5 月 7 日までの知見からは、インフルエンザの場合とは異な り、学校や集団保育の現場で集団感染を起こして広がっていく可能性は低い としていた。 厚生労働省によると、国内の感染者のうち 10 代以下が占める割合は、5 月 1 日には 3.9%だったが、7 月 15 日には 4.7%と、やや増加傾向にある。

欧米でも、5 月ごろまでは小児は成人に比べて感染しにくいとの報告が多く 出ていたが、最近は状況が変わってきている。 国内外の子どもの感染傾向を、日本小児科学会同委員会のメンバーでもある 国立感染症研究所感染症疫学センターの神谷主任研究官はこう説明する。「流行初期に国内外で報告された小児の疫学状況は、ロックダウンや緊急事 態宣言、学校閉鎖といった特殊な環境下のものなので、それが小児の通常の 感染状況だと考えない方がいい」 ロックダウンや緊急事態宣言の最中は、子どもは家族以外とはほとんど接触 せず、保護者もテレワークで外部から感染を持ち込む機会も極めて少ない、とい う環境にいた。

現時点では、子どもは感染しにくいという科学的な根拠は示され ていない。一方で、学校や経済活動の再開後に、学校や保育園のクラスターで感 染が拡大しないか、今後見極める必要がある。子どもの場合、多くは無症状や軽 症ですんでいるが、重症化しないわけではないので、引き続きできるだけ感染さ せないよう注意をした方がいい。 国内よりもけた違いに大勢の子どもが感染した欧米では、やはり大部分は無症 状や軽症だが、まれに全身の血管に炎症が起きる「川崎病」に似た重い症状に陥 る子どもがいる。

聖マリアンナ医科大学の清水直樹教授(小児救急・集中治療) によると、これまで国内では、こういった症状が起きた子どもは報告されていな い。新型コロナウイルスによる肺炎が重症化して人工呼吸器が必要になった子 どももほとんどいないという。ただし、感染人数が増えれば重症化する例が増え る可能性はある。子どもは高齢者に比べれば重症化する頻度は低いものの、一定 の比率では重症化する。だから油断はできない。大人がまず、『3 密』などの対 策を継続し、子どもに感染させないようにすることが重要だ。

 (アエラドットより引用)