新型コロナウイルス感染者の免疫が、短期間で失われる可能性を示す証拠が出てきた。

今 後の感染拡大局面で人々をウイルスから完全に守ることができるワクチン開発を進める製 薬会社などにとって、ハードルが一段と上がってしまった形である。複数の専門家は 14 日、 こうした見方を示した。

中国やドイツ、英国など各地で行われた暫定的な研究結果からは、新型コロナに感染した 人には抗体が作られるものの、わずか数カ月で消滅する様子が見受けられる。 ロンドンにあるインペリアル・カレッジのダニエル・アルトマン教授(免疫学)は「大半 の感染者には(抗体が)できる。だがしばしばそれらは急速に消えてしまいかねない。つ まり免疫力がほとんどつかないことが示唆されている。」と述べた。これはワクチン候補の開発者はもとより、将来のパンデミック(世界的な大流行)に備え た国民へのワクチン供給を目指している各国の公衆衛生当局にも重大な問題を投げかけて いる。

英リーズ大学のスティーブン・グリフィン准教授(医学)は「(パンデミック抑制で)1 つ のワクチンに依存し過ぎるのは賢明ではないという意味だ。」と指摘。ワクチンに本当の効 果を持たせるためには「より強力化して免疫力を長引かせるか、定期的に接種する必要が あるのではないか。」と述べた上で、どちらも消して簡単ではないと警告した。

現在は世界中で 100 を超える研究チームや企業がワクチン開発を競っていて、少なくとも 17 件が臨床試験の段階に入っている。 アストラゼネカがワクチン候補「ADZ1222」を豚に投与した試験では、1 回よりも 2 回使 用した場合の方が抗体値は高まった。ただ今のところどの臨床試験でも、十分強力で持続 的な免疫力を証明するデータは見つかっていない。

(Newsweek 日本版より引用)