増大する医療費の有力な抑制策の 1 つに、後発医薬品の利用促進が挙げられる。

政府は、 これまで、後発医薬品の普及等に向けて、数値目標を示してきた。「経済財政運営と改革の 基本方針2017」(骨太の方針)では、2020年9月までに、後発医薬品の使用割合を 80%とし、出来る限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する、としている。 近年、後発医薬品のうち、オーソライズド・ジェネリック(AG)の参入が相次いでいる。

さまざまな医薬品分類において、新薬メーカーと後発薬メーカーを巻き込む形で、後発薬市 場が活性化している。 ひとくちにAGといっても、新薬メーカーとAGを取り扱う医薬品メーカーの間の契約内 容により、いくつかのパターンがある。通常、AGの有効成分、原薬製造、添加物、製法は、 新薬と同じものとなる。しかし、製造所や製造ラインは、新薬と同じとは限らない。また、 名称は新薬と異なる。 薬価制度上、AGは一般的な後発医薬品と同様に扱われる。具体的には、新規収載される 後発医薬品の薬価は、先発医薬品の5割。ただし、内服薬で銘柄数が10を超える場合は、 4割とされている。そして、薬価改定の際、同一成分・規格の後発医薬品の価格帯は集約さ れることとなっている。

AGが一般的な後発医薬品よりも早い時期に新規収載されると、 両者間で新規収載時の薬価が乖離する。2018年の薬価制度抜本改革では、薬価改定時に AGの価格を後発品の実勢価格までの引下げることとされた。これにより内服薬のAGの薬 価は薬価改定時に、①AGの実勢価格までの引き下げと、②AGと後発医薬品の価格差分の 引き下げ、の2つの引き下げが行われる。

この薬価ルールは、AGを取り扱う医薬品メーカーにとって、販売数量が変わらなければ、 売上げの大きな減少要因となる。一方、薬価改定後のAGと後発医薬品の価格差がなくなる ことで、AGの市場シェアが高まり販売数量が伸びれば、売り上げを維持・拡大する可能性 もある。 医薬品の処方は、現代の医療で重要な位置を占めている。将来的に窮迫していくと考えら れる医療財政の状況を踏まえれば、新薬の特許が切れた後には、速やかに後発医薬品に置き 換えていくことが必要といえよう。その際、AGは、患者と医師に対して、後発医薬品への 移行を促すカギとなるだろう。

(ニッセイ基礎研究所から抜粋)