アニサキス症とは、アニサキスという寄生虫の幼虫がいる魚介類を食べた数時間後に幼虫が主に消化管の壁に食いつくことによって急な腹痛などを起こす感染症です。代表的なものとしてはサバ、イワシ、タラ、ホッケ、イカなどがあります。最近ではサンマも感染の原因になる機会も多いとされます。日本におけるアニサキス症の報告のほとんどは胃への感染です。そのほか、小腸への感染(腸アニサキス症)、まれですが消化管からお腹の中に入り込んで症状を起こす場合(腸管外アニサキス症)もあります。日本のアニサキス症の発生は、刺身やお寿司など海産魚介類を生で食べる食習慣と強く関連しているため、諸外国に比べて多い傾向にあります。時期的には冬に報告が多いといわれており、また地域によっても発生にばらつきがあることが特徴です。アニサキスの幼虫は人の体に入ると、約2~3週間で自然に死滅するとされています。
胃アニサキス症
一般に、アニサキスの幼虫に対する免疫反応の違いによって症状が異なり、急性アニサキス症(劇症型)と慢性アニサキス症(緩和型)に分けられます。多くは急性アニサキス症であり、原因となる魚介類を食べて数時間から数十時間後に強い上腹部の痛み、嘔気・嘔吐を起こします。一方の緩和型は症状に乏しいため、健康診断の内視鏡検査の際に偶然胃の壁に食い付いたアニサキスが発見されることもあります。
腸アニサキス症
アニサキスの幼虫が食いつくことで腹痛、嘔気・嘔吐などを起こします。ときに腸穿孔してしまったり、腸閉塞を起こしたりすることがあります。
消化管外アニサキス症
まれですが、アニサキスの幼虫が消化管から腹腔内に出て寄生することがあります。大網や腸間膜など寄生先の組織に応じた症状を起こします。
アニサキスアレルギー
魚介類を生食した後に、蕁麻疹アレルギー症状がみられることがあります。重篤な症状として、血圧が低下したり、呼吸状態が悪くなったりするなどアナフィラキシー症状を起こすケースもあります。
治療
上部消化管内視鏡検査が治療の中心となります。胃壁に刺入したアニサキスの幼虫を見つけたら、ちぎれないように注意しながら鉗子でつまんで回収します。胃アニサキス症では、複数の虫体が同時に感染してしまっていることも多くあるため、胃内をくまなく調べることが重要です。通常、アニサキスの幼虫を回収すれば諸症状は改善します。症状が改善してくるようであれば入院する必要はなく帰宅可能です。しかし症状が改善しない場合、胃や他の消化管(小腸など)にまだ残っている可能性もあるため、追加検査したり入院して様子をみることもあります。アニサキス症では、腹痛や吐き気などの症状を和らげる治療(対症療法)も試みられます。腸に穿孔がみられる場合や、腸閉塞を起こしている場合などには、外科的な手術治療が必要となることもあります。
(メディカルノート より引用)