高齢者の薬物有害事象を防ぐために、主要な薬物と使用法について「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」と「開始を考慮するべき薬物のリスト」が「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」で示されています。

「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」は、有害事象の回避と服薬数を減少してアドヒアランスの改善、医療費の削減を目的としています。リストにあげられている薬物は「高齢者で重篤な有害事象が出やすい」または「有害事象が現れる頻度が高い」「効き目を考えると安全性が劣る」「他に代わりとなる安全な薬がある」と判断されたものです。

「開始を考慮するべき薬物のリスト」は、高齢者が十分な医療を受けられないこと(過少医療)の回避を目的としており、高齢者には有用性が高いと判断される薬物の中でも、医療の現場で使用されることが少ないものがあげられています。

ガイドラインでは、①精神疾患、BPSD、不眠、うつ、②神経疾患、抗認知症薬、パーキンソン病、③呼吸器疾患、肺炎、COPD、④循環器疾患、抗血栓薬、抗不整脈薬、心不全、⑤高血圧、⑥腎疾患、⑦消化器疾患、GERD、⑧糖尿病、⑨脂質異常症、⑩泌尿器疾患、⑪筋骨格疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、⑫漢方薬、⑬在宅医療、⑭介護施設の医療、⑮薬剤師の役割-の15領域を設定。系統的レビューを行い具体的には、ハロベリドールなど抗精神薬、トリプタノールなど抗うつ薬などは、副作用として認知機能低下などがみられることから、すべての高齢者に対し可能な限り使用を控える(エビデンスレベル:高、推奨度:高)としています。さらに、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不眠薬は、在宅医療で高齢者の転倒リスクを高めると指摘し「長時間作用型は使用すべきではない。トリアゾラムは健忘のリスクがあり、使用すべきではない」としてほかの薬剤についても、最低必要量、短時間での投与を求めています。