2017年2月28日

NHKは2月22日放送の生活情報番組「ガッテン!」で、「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」などの行き過ぎた表現で誤解を与えたとして、26日夜、番組のホームページに「深くお詫び申し上げます」との謝罪記事を掲載しました。

問題となったのは「最新報告! 血糖値を下げるデルタパワーの謎」と題された特集です。番組内では「睡眠薬で糖尿病が治療できる」というテロップなどがあり、糖尿病治療のために睡眠薬を推奨するような場面があった点について、NHKは「行き過ぎた表現や短絡的な表記があり、あたかも睡眠薬を糖尿病の治療や予防に、直接使えるかのような誤解を与えてしまいました」と問題を認めました。また、番組では睡眠薬の名前が特定できる映像や「副作用の心配がなくなっている」といった説明もありました。こうした点についても「あたかも番組や病院が、この薬だけを推奨しているかのような印象となってしまい、配慮に欠けていました」「運動障害の副作用は少ないとはいえ、悪夢や頭痛などの別の副作用は報告されており、大変不適切でした」と記しています。

私は、問題の番組は見ていないのですが、放送を見た家族から、翌日の夜に「睡眠薬で糖尿病の治療もできるようになったらしいね?」と聞かれました。ちょうど昼間に院内で、糖尿病薬の勉強会をしたばかりの日でしたので、「勉強会でもそんな情報は説明なかったなあ」と怪訝に思い、インターネットで調べてみました。すると、ガイドラインに載っている治療法ではなく、「睡眠薬で睡眠障害が改善されると血糖値も改善されるケースがある」という研究データのひとつにすぎないことがわかりました。そして、番組をみたかなりの数の医療関係者がSNSで放送内容に疑問を呈していて、「これは問題になるのでは…」と思っていたところでした。

日本神経精神薬理学会と日本睡眠学会も27日、今回の番組について各学会のホームページで見解を発表しました。「番組で取り上げられた睡眠薬については、既存の臨床試験データにおいても血糖降下作用は確認されていません」とし、「根拠に乏しい効能効果を視聴者に向けて強くアピールしており、糖尿病患者に過大な期待を持たせたばかりか、医療現場での混乱を招いています」などと厳しく批判し、経緯の説明や訂正などの対応を求めています。

健康番組、ましてやNHKの番組の情報はほぼ信じてしまう人が多いと思います。そして、謝罪のニュースをみる機会がなければ、情報は信じたままです。番組制作に限らず、情報を提供する立場にある人たちは、幾多の情報から、刺激的な偏った情報だけを抽出したり、意図的に編集することは簡単にできてしまいます。だからこそ、影響力の強さを自覚して、責任を持って情報を発信していかなければなりません。自分自身も、発信する立場になることがあることを意識し気を付けようと思いました。