「社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)」という言葉をご存知ですか。時差ボケと聞くと、海外旅行などに出かけた際に時差によって起きる眠気やだるさなどの症状を思い浮かべるかと思います。ですが、普段の生活においても体内時計の乱れによって時差ボケのような症状が出ることがあるそうで、それが「社会的時差ボケ」と呼ばれています。
たとえば、普段は仕事で忙しく短い睡眠時間しかとれない人が、休みの日に寝だめをするというケース。心当たりのある人も多いのではないでしょうか。平日は定時に出勤しなければならないので規則正しいリズムで生活を送っていても、休日前夜に夜更かしをしたり、休日の昼ごろまで眠ってしまうことで、体内時計に変調をきたしてしまうのだそうです。こうした生活を毎週繰り返していれば、2~3時間程度のズレでも、その時差ボケはタイ(時差2時間)やインド(時差3時間30分)に毎週出かけているようなものかもしれません。休みの日は遅くまで寝ていたいと思う気持ちはやまやまですが、朝寝坊や二度寝はほどほどにしておくのが健康の秘訣のようです。
厚生労働省の健康情報サイトによれば、体内時計の乱れは「睡眠習慣」に起因する問題で、睡眠時無呼吸症候群のような「睡眠障害」と同様、生活習慣病との関係が指摘されています。たとえば、睡眠不足を2日続けただけでホルモンの働きによって食欲が増大することがわかっており、そのため慢性的な睡眠不足は糖尿病などの生活習慣病に罹りやすくなるのだとか。夜勤も体内時計と生活時間にズレが生じ、不適切な時間の食事などにより生活習慣病につながると推測されているそうです。
新年度からの疲れがたまり、大型連休を控えるこれからの季節は、社会的時差ボケになりやすい時期ともいえます。体内時計に狂いが生じないように、生活スタイルを工夫して、平日の十分な睡眠時間を確保するとともに、休日も平日同様に規則正しい生活を心けたいものです。
ちなみに、米国睡眠医学会によると、次のことを実行すると体内時計のずれを解消しやすいといいます。
①毎日同じ時間にベッドに入る。
②朝食をきちんと食べる、夜遅い時間に食事しない。
③適度な運動をする。
④入浴して深部体温を上げる。
⑤朝の光で体内時計を整える。(朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、照度が100~200ルクスの家庭照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になる。)
⑥寝る前にスマートフォンを使わない(スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。スマートフォンは目のすぐ近くで操作するので特に影響が強い。寝る前にはスマートフォンを操作しないようにする。)
(http://senkousha.or.jp/「仕事と健康」より)