2017.10.12

「多剤耐性緑膿菌について」

緑膿菌とは?

土壌・水中・植物・動物(ヒトを含む)などあらゆるところから分離される常在菌で、ヒト・動物はもちろん、植物にも病気を起こすことがありますが、その病原性は低く、通常は緑膿菌がいても病気になることはほとんどありませんが緑膿菌による感染が成立するためには、

1)体の抵抗力が低下すること
2)周囲に緑膿菌が生存しやすい環境があり、接触の機会が多いこと
などが必要となります。すなわち、通常の健康な方であれば、体に一時的に入ってきても体の抵抗力によって自然に排除されますが、重度の火傷・外科手術・がん治療・移植手術などによって体の抵抗力が弱まった人に侵入すると、容易に感染が成立してしまい、主に、肺炎、尿路感染症、術創部感染症、そして菌血症等を引き起こします。

普通の緑膿菌と「多剤耐性緑膿菌」の違いは? 
感染力・病原性などについては大きな差はなく、「多剤耐性緑膿菌」の最大の特徴は、その強力かつ広範な抗菌薬への抵抗性にあります。
緑膿菌はもともと、他の細菌と比較すると抗菌薬に強い傾向があるために有効なものが限られており、以下の3系統の薬剤が”特効薬”として用いられてきました。
1)フルオロキノロン系抗菌薬:シプロフロキサシン、レボフロキサシンなど
2)カルバペネム系抗菌薬:イミペネム、メロペネムなど
3)アミノグリコシド系抗菌薬:アミカシンなど
しかし近年、上記の薬剤全てに耐性を持つ緑膿菌が現れ、これを「多剤耐性緑膿菌」と呼ぶようになりました。感染症法でも、「薬剤耐性緑膿菌感染症」として5類の定点把握疾患に指定しています。

対策や気をつけるべきことは?  
普通の「緑膿菌」は環境や人・動物などありとあらゆるところに生息していますが、「多剤耐性緑膿菌」は日常的に抗菌薬を使用しているところ、すなわち病院などにのみ分布しています。このため、対策としては病院内の感染対策と抗菌薬の適正な使用が主となります。
一方、日常生活においてはこの多剤耐性緑膿菌との接触がないために感染のリスクはほとんどなく、仮に通院等で病院に行きこの菌と接触したとしても、自然に排除され問題とはなりません。よって、普通に生活していれば恐れる必要は全くないと言えます。

公衛研ニュース第26号(2)より引用