2017.5.27
「中国人による医療爆買い」
日本を訪れる中国人による「爆買い」は、2015年の流行語大賞に選ばれる程の大きな話題となりました。その後、家電、化粧品、日用品などの『物』は日本に行かなくてもネットで買えるようになり、中国人の爆買い対象ではなくなりました。その代わりに、実際に日本に行かないと体験できない『体験型』の爆買いが注目を集めるようになりました。その1つが医療サービスです。中国メディア「今日頭条(ヂンリー・トウティアオ)」が5月17日付で、「医療爆買い」の記事を掲載し、日本の中国情報サイト(*1)でその内容が紹介されました。記事では、多くの中国人が日本に医療サービスを受けにやって来る理由や背景について説明しています。
まず、中国人の中間層の間における「クチコミ力」を挙げています。医療サービスを受ける中国人の主力層は中間層です。その1人が日本の医療に満足すれば、たちまち中産階級のコミュニティーで話題となり、「他の人が満足した日本の医療を自分もぜひ体験してみたい」という群集心理が働き、好循環が生まれるのです。
次に、日本の医療技術や人のクオリティの高さについて言及しています。医療スタッフの優しさ、温かい心遣いや医師の真面目な態度、正確で詳細な検査が評価されており、人間ドックのツアーは特に人気があります。日本のがん検診は世界トップクラスの水準で、検査から治療まで体系が整っている点も人気につながっています。 このほか、中国人の経済力が向上し、日本での医療費を負担できるようになったことや、仲介業者のサービスが充実している点も、訪日医療観光を後押ししている と記事では書かれています。仲介業者は、客のニーズにあった病院の紹介 から現地での送迎、診療に付き添っての通訳など徹底したサービスを提供しており、中国人は国内では味わえない優越感を得られるのです。
また、別の記事(*2)で知ったことですが、中国の富裕層には、治療のため日本に長期滞在する動きも出始めており、日本の緩和医療を気に入り、そのまま日本で息を引き取ることを選ぶ末期患者さんもいるそうです。中国では、末期がん患者に対してクオリティ・オブ・ライフという概念がなく、ホスピスのような施設もほとんどなく、あっても大富豪専用なので、保険がない日本で自費診療を受けた方が安上がりだったりするわけです。
医療爆買いによる社会問題を取り上げた記事(*3)もありました。悪徳仲介業者がビザを不当に申請し、健康保険を作って3割負担で医療を受けさせるケースや、生活保護制度を悪用して負担ゼロで医療を受けられるようにする中国人相手の闇ビジネスも存在するそうです。
これまで「医療爆買い」については実感のわかないことでしたが、政府は医療ツーリズムを推し進めており、これから身近に感じてくるかもしれません。ツアーにかかる料金形態や利用者数や病院数など、実態について知らない点も多くあるので、追って情報を集めていきたいと思います。
(*1)Record China「在日外国人が敬遠する日本の病院、なぜ中国人を魅了しているのか?―華字メディア」
(*2)ZAKZAK「日本の終末医療に向かうマネー 本国にない「緩和ケア」求め」
(*3) DIAMOND ONLINE「中国人が日本の医療にタダ乗り!高額のがん治療で」