2019.03.05
「貼るだけで血糖コントロール世界初のマイクロニードル型人工膵臓」
貼るだけで血糖値を自動的に検知し、それに応じてインスリン供給を調節する機能がある「人工膵臓」により良好な血糖コントロールを得られるという。
マイクロニードル型の人工膵臓プロトタイプを開発
東京医科歯科大学などが、世界初の「エレクトロニクス制御フリー」「タンパク質フリー」「ナノ粒子フリー」なアプローチによる人工膵臓デバイスを開発し、糖尿病モデルマウスでの実証実験に成功したと発表した。
インスリン療法の手段の一つとして、インスリンポンプの普及が進んでいる。「インスリンポンプ療法」は携帯型インスリン注入ポンプを用いて、インスリンを皮下に持続的に注入する治療法。インスリンポンプ療法が血糖コントロールを改善するという報告は多いが、一方で患者に及ぼす身体的・心理的負担や、機械特有の補正・メンテナンスの必要性、運用コストなど課題も伴う。そのため、機械や電気駆動を必要としない、自律型のインスリンポンプである「人工膵臓」を創り出すことが求められている。
そこで研究グループは、タンパク質を一切使用しない、完全合成材料のみによるアプローチを開発した。そして外部刺激に応答して物理化学的性質を変化させる「スマートゲル」を開発するのに成功した。
痛みなく、安く、使い捨て可能な「貼るだけ人工膵臓」
開発した「スマートゲル」と再生絹フィブローインを融合。フィブローインは優れた力学的特性や、生体適合性および科学的に可能な生分解性を持ち、医療で広く利用される生体材料です。
これにより皮下挿入が容易で人工膵臓の機能を発揮するマイクロニードル型の人工膵臓のプロトタイプを開発した。この人工膵臓を健常および糖尿病モデルマウスの皮下に留置する実験を行い、「クローズド・ループ型」のインスリン供給を実現するのに成功。開発したデバイスは2か月以上、継続的な血糖値検知と血糖値変動に応答したフィードバック機構によりインスリン供給を調節し、血糖コントロールを改善することを実証した。今回の研究で開発した技術は糖尿病患者の生活の質改善の観点で求められる「週単位の持続性」ニーズに応えるものだという。
研究グループは機械にたよらず、痛みなく、安く、使い捨て可能な「貼るだけ人工膵臓」の開発を目指している。糖尿病における低血糖の回避、血糖値スパイクの改善などアンメットメディカルニーズ(望まれながらも満たされていない医療上のニーズ)を解決できる可能性があり、開発した人工膵臓は機械型と比べて極めて安価で使用負担も軽減できる。今後、臨床応用へ向けた開発的研究につなげていくと述べている。
dm-netより引用