2018.09.10
「真に迫る幻視、シャルル・ボネ症候群、視覚障害のある高齢者に多い」
シャルル・ボネ症候群(CBS)は,それまで精神的に問題のなかった人に,人物や動物,建物や景色などの幻がありありと見えるものです。本人は,自分が幻を見ていると認識しています。加齢黄斑変性症や緑内障などの病気で視力が著しく低下した高齢者や白内障など視力障害のある患者での報告が多いです。必ずしも視力低下を伴わなくても、臨床場面では,明らかな精神疾患がなく,複雑幻視の存在とそれに対する病識が存在していれば,シャルル・ボネ症候群と診断されることが多いです。
シャルル・ボネ症候群による幻視では、無意味な映像が脈絡なく、しかも現実感や迫真感を持って見えます。人や動植物、幾何学模様などが典型例で、数秒で消えることもあれば、一日じゅう続くこともあります。
人間が「見る」という行為は、「目で見る」ことと「脳で見る」ことの二通りの方法で行っています。「脳で見る」というのは記憶にあるものを呼び起こし、それを映像として認識することです。睡眠時の夢がこれに当たるが、シャルル・ボネ症候群では覚醒時に同じ現象が起きているのではないかとみられています。
著しい視力低下で目からの情報が激減してしまうと、それを補おうと『脳で見る』機能が強まります。これが幻視の正体だと考えられます。手足を切断した人も、あるはずのない手足に痛みを感じることがあります。これは脳が失った手足の感覚を補っているためで、視覚でも同じことが起きていると考えられています。
シャルル・ボネ症候群の病態生理に後頭葉の紡錘状回の活動性亢進が関与しているとの報告もあります。視力の矯正や薬物投与によりシャル・ボネ症候群が改善することもあるが,認知症への移行例もあり,縦断的な観察が必要です。
https://medical.jiji.com/topics/676より引用