2018.06.06
「土いじりする時は破傷風菌に注意」
土いじりの際に注意すべき感染症があります。破傷風です。原因となる破傷風菌は、世界中の土壌を含め、ありとあらゆる所にいます。熱や乾燥、消毒薬にも強く、日常生活において破傷風菌との接触を完全に防ぐことは不可能とされています。破傷風は、おもに土の中にいる破傷風菌が傷口などから体内に入ることで発症します。深い刺し傷が原因になることが多いのですが、やけどや浅い傷でも発症し、どこから菌が侵入したのかわからない人もいます。
破傷風菌が傷口から体内に侵入し増殖すると、傷口が治る頃に「テタノスパスミン」という毒素を産生します。この毒素はボツリヌス毒素に次いで、地球上で2番目に強力な毒性を持つとされます。テタノスパスミンはさまざまな神経に作用し、全身の筋肉を硬直させます。
破傷風菌が体内に入ると、3~21日間の潜伏期間の後、症状が現れます。最初は口が開けにくくなることが多く、やがて体中の筋肉が硬直し、全身のけいれん発作を起こすようになります。破傷風の治療は大変困難です。発症初期には、破傷風菌に対する抗菌薬や、破傷風毒素を中和する作用のある抗破傷風ヒト免疫グロブリンを投与します。対症療法として、けいれんを抑える薬の投与や呼吸・血圧の管理も重要です。発症すると死亡率は10%以上で、救命できた場合でも、手足を動かすことができなくなったり、脳に重い障害が残ったりすることがあります。早期診断、早期治療がきわめて大切です。
ワクチンの注射によってほぼ100%予防が可能で、1968年に子供を対象に予防接種が行われるようになってから、患者数は大幅に減少しました。しかし、ワクチンの効果はおおよそ10年とされています。実際、破傷風を発症した人の多くは、ワクチンの効果が切れてしまった中高年世代です。子供の頃に予防接種を受けた人は、10年に1回の間隔で追加接種を行うと、予防効果を維持できます。
破傷風菌は世界中に広く存在しています。わが国においても、全国で毎年100人ほどが破傷風を発症しています。そういう点では誰にでも感染のリスクがある病気です。転倒や作業で受傷した時や、動物にかまれて傷ができた時は、病院を受診して傷口の洗浄などの適切な処置を受けましょう。傷の状態によっては、破傷風ワクチンが行われる場合があります。
朝日新聞デジタルより引用