2018.05.13

「疥癬、ヒゼンダニが皮膚に寄生 感染拡大の防止が課題」

疥癬は、ダニの一種であるヒゼンダニがヒトの皮膚に寄生して起こる、かゆみを伴う感染性皮膚疾患です。ヒゼンダニは目に見えないくらい小さく、皮膚の表皮の一番外側にある角層に寄生します。ヒトの体温くらいがいちばん快適で、ヒトの皮膚から離れると長く生きられません。高熱や乾燥に弱く、50度以上の環境に10分さらされると死滅することが分かっています。
皮膚に産み付けられた卵は3~4日でかえり、成長して手首や手のひら、指の間、肘、わきの下、足首や足の裏、外陰部などに疥癬トンネルとよばれる横穴をほり、卵を産み付けます。ここまでのライフサイクルがだいたい10~14日です。
疥癬には「通常疥癬」と「角化型疥癬(ノルウェー疥癬)」の2種類があります。どちらもヒゼンダニが原因ですが、寄生しているダニの数が大きく異なります。通常疥癬の場合、一人の患者に寄生するのは数十匹以下ですが、角化型疥癬は100万~200万匹と桁違いに多く、感染力が強いという特徴があります。
通常疥癬は一般に約1カ月の潜伏期間をおいて発症するとされ、非常にかゆみが強いのが特徴です。主な症状としては次の三つがあります。
①わきの下、腹部、四肢の内側に赤い丘疹が出る。
②外陰部、肘、臀部などに赤褐色の盛り上がりである結節ができる。
③指の間や手のひらに長さ数ミリの細い線状の盛り上がり(疥癬トンネル)ができる。
角化型疥癬は、老衰や悪性腫瘍の患者さんのほか、何らかの要因で免疫力が低下している人に発症する重症型の疥癬です。きわめて感染力が強く、潜伏期も4~5日と短いため、厳重な隔離・接触予防策が必要となります。

治療にはヒゼンダニを死滅させることを目的とした外用薬(オイラックスクリームなど)や内服薬(ストロメクトール)が使われます。
感染予防対策は、通常疥癬と角化型疥癬では大きく異なります。通常疥癬では、タオルなど皮膚に直接触れるものを患者と共用したり、患者の患部に長時間直接接触したりすることを避ければ、特別な対応は必要ありません。一方、角化型疥癬の場合は1~2週間の隔離が必要とされます。老衰や悪性腫瘍の患者さんが感染することが多いので、介護をする人は予防着や手袋の着用が必要です。疥癬患者さんへの対応では、治療に加え、感染の拡大を防ぐための予防治療が課題となります。

朝日新聞より引用