2018.05.10

「最新補聴器事情」

家族にテレビの音量が大きいと指摘されたり、話を聞き直すことが増えたら、難聴の可能性を意識します。難聴にはさまざまな原因がありますが、多くの人にとって他人事では済まされないのが加齢性難聴です。
一般に30代頃から高音域が聞き取りづらくなり始め、やがて60代になると、個人差はあるものの言葉の聞き取りにも影響が出てきます。
一般社団法人日本補聴器工業会による2015年の調査では、自分は難聴である、またはおそらく難聴であると思っている人の割合は、55~64歳で約10%、65~74歳で約18%、74歳以上では約42%にも跳ね上がっています。しかし、自己申告難聴者における補聴器使用率はわずか13.5%と、欧米先進国の約30~40%と比較しても著しい低さです。これは、補聴器に対する認識や意識の低さ、イメージの悪さが影響していると考えられています。
「補聴器は高度または重度の難聴者のみが使う器具と思っていたり、必要以上にうるさくてわずらわしいものと想像する人が少なくありません。しかし、加齢性難聴はかかる可能性がありますし、最新の補聴器は思っている以上に性能が良いデバイスであるようです」
最新の補聴器にはスマートフォンと連動するスマート補聴器があり、環境に合わせた微調整や、スマートフォンで行う通話音声の直接出力、補聴器を紛失した際の位置測定などに対応します。耳あな型、耳かけ型など好みに合わせて選択できるよう複数のモデルがあり、洗練された色やデザインがあります。中にはわずか1グラムしかないモデルもあり、装用していることを忘れてしまいそうなものまであります。
「補聴器はベージュ色で、耳から大きくはみ出るダサい器具」というのは、一昔前のイメージに過ぎません。
そして新しい取り組みとして注目されているのが、これまで販売店でしか対応できなかった補聴器の調整を、自宅に居ながらにして行える新機能です。補聴器の利用を視野に入れた場合、まず耳鼻科医の診断を受け、必要に応じて販売店で補聴器を購入するのが一般的な流れですが、その後も販売店を何度か訪れ、調整を重ねる手間が発生します。視力が0.1もない人が急に1.0に矯正すると、目が疲れて気分を害してしまうように、聴力も急に上げると支障をきたす恐れがあるためです。
最新型の補聴器は販売店とのコミュニケーションや調整データのやり取りを遠隔操作で行えるようになっています。わざわざ時間を作って店に赴く煩わしさがなくなり、頻繁に調整すればデータも蓄積され、よりベストな状態へたどり着きやすくなるという特徴があります。
また、音質処理技術も大きく向上し、従来機種に比べて音の認識能力が上がり、騒音の激しい場所でも会話音を正しく識別できるようになっています。「静かな場所や、一対一の会話なら問題が無くても、雑然とした場所での会話や大人数での会議になると聞き取りづらくなるという人は多いようです。音声信号処理の向上によって、よりクリアに聞こえるようになりました」とのこと。
単に「聞こえる」だけでなく生活全体の満足度が向上していきます。
「補聴器は、高価なモデルほどよく聞こえるというものではなく、必ず使用者の聴力に最適な調整を施す必要があります。その調整の手間が簡便になったことで、満足度も高められると考えています」。
「聞こえ」が悪くなると他人とのコミュニケーションに臆病になり、社会との接点が希薄になりがちです。それが周囲からの孤立を招き、生活から充足感を失わせることにつながりかねません。ぜひ、今後さらに開発が進み、オリジナルの補聴器がだれでも持てる時代になっていってほしいと思います。

引用:東洋経済新報社ホームページ