2018.4.17
「認知症サポーターの心得」
認知症を正しく理解し、本人や家族の支えになる「認知症サポーター」。サポーター制度は厚生労働省が2005年に始めたものです。認知症は当時、原因がわからず治らないと偏見の目で見られており、正しく知って不安を除く狙いで導入されました。厚労省が「痴呆」から「認知症」に呼び方を変えた直後にあたります。
サポーターになるには約90分の無料講座を受け、認知症の原因や症状について説明を受け、「驚かせない、急がせない、自尊心を傷つけない」といった心得や、「後ろから声をかけず、目線を合わせる」など会話のコツを学びます。年齢制限はありません。サポーターの目印の腕輪「オレンジリング」を修了時に受け取ります。
サポーターの数は想定を上回るペースで伸び、開始5年目で100万人を超え、その後も毎年100万人前後増加。今年3月末で1015万1589人に達しました。最近は小中学校単位で受講することも多く、20歳未満のサポーターは210万人にのぼります。身近な病という認識の広がりから詳しく知りたい市民が増えるとともに、できる範囲で手助けする手軽さもあり、人数増につながったようです。
「認知症サポーター」の広がりが早期対応や治療に結びつくケースも出てきたという記事をご紹介します。
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高齢化率(65歳以上の割合)が32・6%と全国平均より約6ポイント高い福井県若狭町(わかさちょう)。人口約1万5千人の町で、これまで延べ1万2千人余りがサポーターの養成講座を受講した。人口の約8割にものぼる。看護師が高齢者宅で脳の模型を使いながら一対一で教え、サポーターを増やしてきた。婦人会や地域の集まりにも呼びかけた。その結果、認知症を隠さず、「うちの親が困っているようだったら教えて」と近所で声を掛け合うオープンな雰囲気が広がった。地域で認知症の中心的な医療機関に指定されている敦賀(つるが)温泉病院によると、若狭町では周辺の市町より早期に受診する人が多く、その分、重症度が低かった。
秋田県羽後町(うごまち)でも、助け合いの精神が広がり、認知症の人に素早い支援ができるようになってきた。サポーターでつくる「うごまちキャラバン・メイト認知症サポーター協会」の会員は約60人。認知症の人たちの居場所づくりの一環で、農園でブルーベリーを育てたり、見守り活動の勉強を重ねたりしてきた。認知症の人と住民が交流する認知症カフェを設け、予防に効果があるとされるトレーニングも試みた。サポーターの熱意に後押しされた商店やタクシー会社、学校のPTAなどが次々と輪に加わり、「同じ買い物を何度もする」「道に迷っているようだ」といった情報が頻繁に寄せられるようになった。支援や治療が必要な人を、素早く介護や医療につなげられるようになった。
サポーター制度の課題は「量から質」への発展だ。数が増えたとはいえ、地域の支え手として生かし切れてはいない。1回受講するだけでは十分に理解が深まらず、活発に役割を果たすのが難しいとの声もあり、行政や支援団体にサポーターの活動を促す態勢づくりが求められる。人数が少ない20代~40代の取り込みも必要とされている。事務局を担う全国キャラバン・メイト連絡協議会はいま、サポーターの能力を伸ばし、より実践的な活動につなげてもらうためのステップアップ講座に力を注ぐ。認知症になっても安心して暮らせる社会が広がっていけるよう手助けをしていこう。 (朝日新聞「認知症サポーターの心得」記記事より抜粋引用)
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