29.11.28
≪2018年度の次期診療報酬改定において≫
▼医療機関に併設する有料老人ホームなどへの訪問について、コストに着目した評価を新設する。
▼末期がん患者に対する【在宅時医学総合管理料】において、医療機関とケアマネとの連携を要件に設定する。
▼ターミナルケアを継続しながら、死亡直前に入院した場合でも、「看取り」として取り扱う。
▼一定要件の下で、複数医療機関からの訪問診療を認める。
といった見直しを行ってはどうか。と11月10日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、在宅医療をテーマとした議論が行われました。地域包括ケアシステムの構築に向けて、「患者が希望に応じて、入院医療と在宅医療とを選択できるような体制」の確保、必要な患者に対応できるだけでの在宅医療提供体制を整備することが重要課題となっています。厚生労働省は、「2018年度からの医療計画の中に在宅医療などの整備目標を記載する」「在宅医療に関するエビデンスを構築する」といった方針を定めるとともに、診療報酬での適切な評価を順次進めています。2018年度の次期改定に向けて、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、さまざまな提案を行いました。
その一つとして
▼医療機関に併設する有料老人ホームなどへの訪問について、コストに着目した評価を新設する。とし施設総管などに着目し、同一建物減算のような規定を検討するとして2016年度の前回診療報酬改定に、在宅医療の報酬体系を大きく組み替えることを提案。
▼1か月に2回以上の訪問を行っているか。
▼1か月当たりの同一建物における訪問人数はどの程度か。
▼対象患者は重症 という3つの軸に沿って現在の診療報酬は点数設定がなされています。
2016年度の診療報酬改定で、在宅医療の報酬体系は大幅に組み替えられた(施設総管)
迫井医療課長は、有料老人ホームなどの入所者に訪問診療を提供するに当たって「当該住宅と医療機関が同一建物、あるいは隣接しているか」という新たな評価軸の導入を提案しています。
厚労省の調査によれば、有料老人ホームなどに居住する自立または要支援1・2の入所者にも月2回以上の訪問診療が行われている。入所者がもっとも利用する在宅医療機関の1割程度は同一建物医療機関(当該住宅と医療機関とが同一の建物あるいは隣接している状況など)である一部の医療機関では、訪問診療患者の過半が要介護1以下である。となっており、同一建物への訪問診療が一定程度行われている状況が分かります。同一建物への訪問は、当然、移動距離が短く、コストも小さくなります。約6~8割の医療機関は、同一建物以外の患家に訪問診療を行っているが、1割程度は「同一建物・隣接地」の患家に訪問を行っており、後者では移動コストが小さい。
こうした状況を踏まえて迫井医療課長は上記の提案を行っています。例えば、同一建物の居住する要介護度の低い患者への訪問診療においては、より低額な報酬設定(例えば施設入居時等医学総合管理料など)を行うことなどが考えられます。この点を、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は「医学管理の必要性は同一建物であるかないかで変わるものではない。訪問と医学管理を分解して考えるべき」と要望しましたが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「移動コストが小さいのであるから、施設入居時等医学総合管理料に差を設けるべき」と反対しています。「同一建物」の定義について、診療報酬・介護報酬の同時改定でもあり、両者で可能な限りの整合性を図ることになるでしょう。
また、2018年度から▼医療▼介護▼住まいの3機能を併せ持つ『介護医療院』が新設されます。介護医療院は医療施設という位置づけであり、入所者へ外部から医療提供を行う場合の診療報酬の調整(医療施設であり、無制限に外部から医療提供することは認められない)について、介護療養や介護老人保健施設などと同様に考える方向も示されています。
メディウォッチより