2017.7.6
「亜鉛欠乏症」
亜鉛は鉄や、銅などと同じように、私達の体のタンパク質合成や免疫機能の維持に欠かせない必須微量元素。毎日の食事の中から微量に摂取されていますが、不足すると体にさまざまな不調を引き起こします。特に小児や、高齢者では亜鉛欠乏症になっているのに気づかずに放置している人も少なくありません。早めの対処が肝心です。
【亜鉛の働き】
亜鉛は300種類以上の酵素の活性化に必要な成分です。細胞分裂や新陳代謝に重要な役割を果たし、その効果は全身に及びます。主な働きは、皮膚の代謝、成長を促す(小児のみ)男性ホルモンの分泌を促す、妊娠の維持、骨格の発育、味覚の維持、精神・行動への影響。血糖値を下げるインスリンの合成、免疫機能を維持、タンパク質の合成。
亜鉛が欠乏すると…
■味覚障害:味蕾という味細胞の新陳代謝が衰えて味を感じにくくなり金属を口に含んだような 味がして食べ物がおいしくなくなります。
■湿疹、皮膚炎、口内炎、抜け毛など、タンパク質の合成が衰えるため放置するとまったく髪の毛がなくなることもあります。
■食欲不振、骨粗鬆症、感染症にかかりやすくなります。
■男性の場合は勃起不全、性腺の発達障害、不妊症になる人もいます。
■お子様の場合、成長障害につながる恐れがあります。
■高齢者では褥瘡ができやすく治りにくくなります。特に高齢者で肝疾患を持つ場合は亜鉛欠乏症から肝機能低下が進み肝硬変への移行リスクが高まります。
亜鉛が不足すると、タンパク質を合成する過程でアンモニアが処理できず、肝臓でのたんぱく合成能力が衰えるため血中のアルブミン値が低下し、アンモニア値が上昇すると考えられます。
(血中アルブミン値3.5g/dl未満は亜鉛欠乏症の可能性あり)
【亜鉛不足の原因】
亜鉛は体内で合成したり蓄えたりできない元素です。不足する要因としては亜鉛を含む食品の摂取不足、インスタントや加工食品が多いと自然食品からの摂取が不足します
慢性肝炎、過敏性腸症候群や食物繊維の過剰摂取によって亜鉛の吸収が悪くなります。妊娠、授乳で亜鉛の需要が増加します。亜鉛の排出促進する薬の服用、糖尿病、慢性腎障害によって尿から亜鉛の排出が増加します。過度な運動、激しい運動をするスポーツ選手は亜鉛を含む食品を多くとらないと亜鉛不足による貧血になることが多いという報告があります。
★亜鉛を多く含む食品★
牡蠣、豚レバー、牛肉(肩、もも、赤身)牛レバー、鶏レバー、ホタテ、うなぎの順です。
◎亜鉛が不足しているかどうかは血液検査で簡単に調べられます。
特に高齢者は味が感じにくくなったり、感染症にかかりやすくなったという症状が出ていても「年のせい」と放置しがちですが、慢性肝障害や、糖尿病など亜鉛不足になりやすい病気がある人は血液検査で調べてみることをお勧めします。
血清亜鉛値60㎍/dl未満は亜鉛欠乏症、60~80㎍/㎗未満は潜在性亜鉛欠乏症が考えられます
◎治療としては食事内容の見直しと、低亜鉛血症治療薬の内服で症状の改善が期待できます。