迷走神経反射とは、自律神経反射の一つで若い健康な方にも起こりうる反射です。
生命を維持しようとする正常な生理的防衛反応ですが、問題となるのは過剰な反応が起こる場合です。過度のストレスや強い痛み、恐怖心などが原因となり迷走神経が刺激され、末梢の血管が拡張し、血圧が低下するために脳に十分な血液が送れなくなり、起こります。立位、または座位で生じますが、横になった状態では起こりません。症状は血の引くような感じ、冷や汗が出る、目の前が暗くなる、吐き気や腹部の違和感などですが、これらを前兆として失神に至ることもあります。また、排尿による血圧低下も急に起こると失神を来すことがあります。
失神を起こした場合は他の病気の可能性を考え、場合によっては検査が必要です。
電車の中や朝礼などで長時間の立ちっぱなし、注射や採血のあと、激しい腹痛のあとなど、生活の様々な場面で起こる可能性があり、寝不足や飲酒、脱水といった状況はこの反射をさらに起こりやすくします。
対策としては、まず迷走神経反射を起こしやすい状況を避けることです。すべてが避けられなくても例えば朝礼の前日はしっかり睡眠をとる。採血や注射は寝た状態で行うなども有効な対策です。前兆を感じた場合は、可能であれば横になる、不可能であればしゃがみ込むことですが、どちらもできそうもなく症状が軽い場合は、足を交差させてふくらはぎや、おしりに力を入れたり、両手をひっぱることで血圧が上昇し、失神が予防できることがあります。症状がなくなったら、ゆっくり慎重に様子を見ながら立ち上がってください。
当院でも採血や注射時に不安の強い方や、このような症状を起こしたことのある方の場合は、心配ない事を説明して臥位での処置を行い、気分が落ち着いてから退室して頂くよう注意して下さい。
(日本救急医学会より引用)