国立国際医療研究センターの総合診療科には、「私はいったい何の病気なんだろう?」とすっきりとしない悩みを抱えた患者さんがやってくる。たとえば、発疹一つとっても、薬剤のアレルギーかもしれないし、感染症かもしれない。

晩冬から春にかけては風疹、はしか、おたふく風邪などの感染症が増える傾向があるという。インフルエンザは、乾燥しやすい冬がハイシーズンだが、風疹・はしか・おたふく風邪はなぜ春に流行するのだろうか。この現象は社会情勢を反映しているのではないかと考えられています。3つのウイルスをまとめて語るのは難しいですが、日本では、新入社員や新入生など、多くの人が新しい環境に入るのが春です。人が大きく動く春は、ウイルスの抗体を持たず、抵抗力の弱い“丸腰の人”が、新しい環境で感染症にかかる可能性をはらむ季節でもあります。

新型コロナウイルスが流行している昨今、感染症についての見極めが非常に難しくなってきています。その病気の特徴を再確認し、適切な対応ができるように理解しておきましょう。

病名 風疹 麻疹 流行性耳下腺炎(ムンプス)
俗称 3日はしか はしか おたふく風邪
症状 発熱、発疹(額や顔から全身に広がる)、耳の後ろのリンパ節が腫れる 発熱、鼻汁、目やに、全身の発疹、口の内の白い発疹(コプリック斑という) 耳の下(耳下腺)や顎の下(顎下腺)がぷっくりと腫れる、頭痛、発熱
感染経路 飛沫感染、接触感染 空気感染、飛沫感染、接触感染 飛沫感染、接触感染
潜伏期間 4~21 日 10~12 日 14~24 日
学校保健法が定める出席停止期間 発疹が消えるまで 熱が下がって3日を経過するまで 耳下・顎下の腫れが出てから5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで
合併症 髄膜炎、突発性血小板減少性紫斑病 肺炎、髄膜炎、脳炎 精巣炎・卵 巣炎、髄膜炎、聴力障害
ワクチンの費用(*) 風疹・麻疹の混合ワクチンが8000~10000円程度 5000~8000円程度

風疹、はしか、おたふく風邪を予防する唯一の手段は、ワクチンの接種。いつ接種すればいいのか?これらの感染症を予防するためのワクチンは、今から打っても遅くありません。打とうと思った時がタイミング。なかなか「今でしょ!」と踏み切れない人が多いのは、費用の問題です。患者様に費用を確認される際は、お伝えできるようにしておきましょう。ワクチンを接種したかどうかの記憶が怪しいなら、母子手帳で確認すると良いでしょう。

(大人が重症化する春の感染症より 引用)