2017.04.18

「上手に付き合いたい加齢性難聴」

だれでも年をとると、徐々に耳の聞こえが悪くなっていきます。でもそのまま放置しておくと、日常生活にも支障がでて、大変不便な思いをします。字が見えにくくなる、物忘れが激しくなったなど年をとると、身体の各部に老化現象が現われてきます。それは聴覚についても同様で、だんだんと耳の聞こえが悪くなります。このように、おもに老化が原因で起こる聴力の低下を、加齢(老人)性難聴といいます。 聴覚の老化は、30歳代から始まるといわれますが、ゆっくりと進行するため、普通は50~60歳代で「聞きづらくなった」と意識することが多いようです。ただし個人差が大きいため、80歳を過ぎても、よく聞こえるという人もいます。

 

耳は、外耳・中耳・内耳の3つの部分から構成されています。 空気の振動である音は、外耳道(外耳)を通じて耳の中に入り、その奥にある鼓膜を振動させます。鼓膜の振動は、その内側にある耳小骨(中耳)へと伝達され、そこで振動が増幅されて、さらに内側の蝸牛(内耳)と呼ばれる器官に伝えられます。蝸牛は、その振動を電気信号に変え、聴神経を経由して脳に届けます。脳では、その信号を瞬時のうちに処理・解析して、何の音かを感知したり、また言葉を理解したりしているのです。これらの経路のうち、とくに加齢性難聴と関係が深いのが、老化による蝸牛の機能低下です。蝸牛の中には、有毛細胞という、毛の生えた細胞が規則正しく並んでいます。この毛がアンテナの役目を果たして音を感じているのですが、年をとると、毛が祈れたり、細胞自体がはがれ落ちたりして、充分に音をとらえられなくなってしまいます。その結果、聞こえが悪くなり、加齢性難聴が起こるのだといわれています。

 

加齢性難聴の初期には、小さな声や遠くの音から、徐々に聞こえが悪くなり、年齢とともに難聴が進むと、普通の音量の会話が聞き取りにくくなり、やがては、耳元で大きな声で話してもわからない、聞こえない、という状態になっていきます。 また、音の高低でいえば、まず高い音から聞きづらくなり、やがて低音域へと広がっていくのが特徴です。デジタル体温計や携帯電話のピーという電子音などは、割に早い段階で、はっきりと聞こえなくなることがあります。 さらに加齢性難聴は、両耳に同じように発症することが多く、音がこもったように聞こえます。そのため、会話の声は聞こえても、言葉として聞き取りにくい、ということが起こってきます。とくに聞き間違いが多いのは、「カ行、サ行、ハ行」を含む音で、「サトウ(佐藤)」を「カトウ(加藤)」「シチジ(7時)」を「イチジ(1時)」と聞き違えるというケースがよく見られるそうです。

 

また高齢者に多いことを考えれば、耳から入る刺激や情報が少なくなることで、脳の老化が進んでしまうことも心配されます。コミュニケーションがうまくとれず、つい人とのつき合いを避け、家にこもりがちになって、うつ状態や認知症につながっていく危険性も。加齢性難聴の兆候に気づいたら、早めの耳鼻科受診をお勧めします。

 

                伊豆ネット ALL RIGHTS RESERVED.より引用