唾液 PCR に抗原検査、抗体検査と新たな検査方法の導入が進んでいる。
「現状の抗体検査は、感染後しばらくすると IgG や IgM という抗体の有無を見るものだが、これでわかるのは過去のウイルス感染履歴のみ。
抗体検査で陽性が出たからといって、もう感染しないというライセンスが与えられたわけではない」と熊ノ郷教授。

「多くの人は、一度病原体に感染すると抗体ができ、しばらくは同じ病気にかからないと考えられているようだが、実は、1 種類のウイルスに対して体の中で作られる抗体は数十万もある。ウイルスの感染を防ぐ善玉抗体は一部。逆に感染を悪化させる悪玉の抗体や、全く役に立たない抗体も多い」

つまり、新型コロナウイルスに対して有効な抗体が多くできていなければ再感染の可能性はあり、集団免疫も成り立たないという。
また、「抗体の有無だけでは体内のウイルスが減ったかどうかまではわからない。PCR 検査なども組み合わせながら現在の感染有無を評価する必要がある」(熊ノ郷教授)

抗体に関する研究はワクチン開発においても重要な意味を持つ。ウイルスの中のどの部分が善玉抗体を増やし、どこが悪玉を増やすのかがわかれば、有効性の高いワクチン開発が可能になるからだ。

ただし、抗体産生能には個人差もある。「長年の研究を重ねてできたインフルエンザワクチンであっても、接種して有効な抗体を作ることができる人の割合は 10 代で 6~8 割程度。40 代以降であれば、2 割程度しか有効性を発揮できないというデータもある。
抗体産生能の低い人の場合、感染履歴やワクチン接種が必ずしも十分な予防策にならない。
手洗いやマスクでの予防が必要だ」(熊ノ郷教授)。

(NIKKEI Health  より引用)