2018.11.30
「感染症後のインフルエンザ予防接種について」
わが国の予防接種ガイドラインでは疾病罹患後の間隔”について次の記載があります。
「麻しん、風しん、水痘及びおたふくかぜ等に罹患した場合には、全身状態の改善を待って接種する。医学的には、個体の免疫状態の回復を考え、麻しんに関しては治癒後4週間程度、その他(風しん、水痘及びおたふくかぜ等)の疾病については治癒後2~4週間程度の間隔をおいて接種する。その他のウイルス性疾患(突発性発疹、手足口病、伝染性紅斑等)に関しては、治癒後1~2週間の間隔をおいて接種する。しかし、いずれの場合も一般状態を主治医が判断し、対象疾病に対する予防接種のその時点での重要性を考慮し決定するとあります。 また、“家族や周囲の人の罹患”については、「患者と接触し、潜伏期間内にあることが明らかな場合には、患児の状況を考慮して接種を決定する」が該当します。 個々のケースで判断することになりますが、万全を期すあまりに接種の機会を逃すことは避けたいものです。特にインフルエンザワクチンについては、流行期前に接種しておくことが予防のために大切です。インフルエンザワクチンを疾病罹患後に接種する場合、注意点は二つです。
第一の注意点は、免疫反応の減弱によるワクチンの効果低下で、せっかく接種するならワクチンは最大限の効果を発揮してほしいものです。麻しんや帯状疱疹、EBウイルス感染症などの罹患後は、接種時の宿主免疫能を考慮して判断しましょう。その他のウイルス性疾患罹患後も同様です。 第二の注意点として、疾患に続発する合併症の起こる可能性がある期間中は、紛れ込み有害事象を防ぐ意味で接種を控えたほうがよい場合があります。たとえワクチンによる直接の因果関係がなくても、その後のワクチン不信や誤解につながるのは残念です。ウイルス性疾患では、おたふくかぜによる無菌性髄膜炎や風しん罹患後の血小板減少性紫斑病などがこれに該当し、回復直後に接種する場合は十分説明する必要があります。 小児の熱性けいれんについては、日本小児神経学会の見解(平成27年12月)では、「現行の予防接種はすべて行って差し支えない」ですが、「保護者に対し、個々の予防接種の有用性、副反応(発熱の時期やその頻度他)、などについての十分な説明と同意に加え、具体的な発熱等の対策(けいれん予防を中心に)や、万一けいれんが出現した時の対策を指導」しておくことが必要とされています。 てんかんの既往のある者については、病状が安定している時期に接種するのがよいでしょう。同じく日本小児神経学会の推薦する予防接種基準は、てんかん発作のコントロールが良好な場合は、最終発作から2~3カ月程度経過していること、ただし、発作状況が確認されており、病状と体調が安定していれば主治医(接種医)が適切と判断した時期に接種が可能です。また、発熱した場合の発作予防策と発作時の対策を保護者へ指導し、十分な説明と同意が事前に必要です。
数日中に全身麻酔などでの手術を控えている方は、接種後の発熱などの副反応が起こる可能性があり、副反応が起こった場合には手術の延期なども考慮しなければならないため、接種時期は主治医と相談する必要があります。
偶発症の出現を考慮すると疾患が回復する4週間後に接種することで効果の減弱が防げるようです。ただし、流行期に入る前に接種ができるように主治医と日程などの相談をしていくように指導していきましょう。
引用参考 アステラスメディカルネット他