2018.10.31
「老人の「食べる幸せ」を守る 家族がすべき4つのチェック」
高齢の親が食べられなくなった時、その原因はさまざま。NPO法人「口から食べる幸せを守る会」の小山珠美理事長に聞いた。現在の医療では「食べられなくなった理由」をきちんと探り、対処されるケースはまれ。小山氏は看護師としていち早く「口から食べることの重要性」に着目し、全国各地で講演会や指導を行っている。「食べる幸せ」を守るには、何をチェックすべきか? 小山氏によれば、口から食べられなくなった理由には、大きく分けて4つの観点がある。 心や体はどうか? 一人暮らしで作る食事はわびしく食べる気がしない――。このような状態であれば、食べる意欲が湧かず、低栄養を招く。冷蔵庫に作り置き食品を置いても、「食べる意欲」を上げる対策でなければ状況は変わらない「肺炎で搬送された患者さんの口の中を見ると、口腔環境が非常に悪く、汚染、虫歯、歯周病、不適合義歯などの方が多い。食欲がなくなる上に、菌の繁殖を招き、肺炎を引き起こします」 食べるために必要な機能はどうか? 脳障害や認知症などで、「咀嚼」「舌にのった食物を喉の奥に送る」といった機能が衰えれば、食事が困難になり、栄養状態が不良となる。「嚥下の機能だけをみるのではなく、トータルの視点をもった正しい食事介助が必要」 姿勢や活動量はどうか? 要介護で食事介助を受けている場合、特にチェックすべき。あごが上がっていたり、顔が横を向いていたり、過度に前傾姿勢だったりすると、健康な人でものみ込みづらい。食事介助をする人のスプーンを運ぶタイミングが遅かったり速すぎたりすると、やはりのみ込みづらい。「活動量が少なければ、お腹がすきませんから、食べたがらない。姿勢調整と活動は安全に食べるための必須条件です」 食べやすい形態などになっているか? 「食べる力が衰えた人の食事は、細かく刻んだり、とろみをつけたりすればいいと誤って認識されている。舌の上で食物をまとめる力が落ちている人が、細かく刻んだ食物を食べるのは困難で、誤嚥しやすくなる。個別に応じた食物形態の調整が必要です」 小山氏は4つの観点から総合的に評価し、「なぜうまく食べられないのか?」「では、どうすればよいのか?」を判断して指導。8000人以上を口から食べられるようにしてきた。
「患者側(家族を含む)が結論を下すしかないが、医療関係者と積極的なコミュニケーションをとった上で、『食べる幸せ』を簡単に諦めないでほしい」と話す。
ヘルスケアより引用