2018.3.16
「高額免疫治療薬がどんどん値下がり」
癌医療の三大療法である手術、放射線、薬のいずれにも大きな変化起きている。手術ではロボット支援手術、放射線では前立腺癌の粒子線治療、薬物では免疫治療薬「オブジーボ」の適応が拡大している一方、価格がどんどん値下がりしている。
小野薬品工業の相良暁社長は2014年に日本で最初に製造販売の承認を受けた免疫チェックポイント阻害剤「オブジーボ」が医療界の常識を覆した様をこう語った。
当時、癌免疫治療は「効く、効く」と何十年言われ続け、結局、科学的根拠が乏しい、ものばかりで不信感が大きかった。オブジーボもその部類だろうと思われていたが、いざ患者に投与すると驚くほどの効果を示した。
14年に悪性黒色腫を皮切りに15年に肺癌。16年に腎細胞癌とホジキンリンパ腫、17年に頭頚部癌や胃癌と次々に有効性を証明して承認を得た。
そもそも癌免疫療法とはどんなものか?
人の体内では日々、癌細胞が生まれる。免疫細胞(T細胞)が正常に作用すれば癌細胞は適切に排除され、健康体は守られる。しかし免疫にブレーキがかかると癌細胞は異物として排除し切れないことがある。そこでそのブレーキを外す免疫チェックポイント阻害剤「抗PD-1抗体」が癌細胞の攻撃するオブジーボが癌免疫療法だ。
オブジーボが「夢の癌治療薬」と呼ばれている由縁は切除不能な癌、難治性の癌に有効でオブジーボの生みの親の京都大学:本庶佑名誉教授はノーベル賞候補と騒がれ、大阪の中堅製薬会社は世界から注目を浴び業績も過去最高を記録した。
国内で先頭を切って癌治療対象を広げているオブジーボだが万能ではない。効果がある対照患者は2割程度で目下、どのような患者に効果があるのか研究が進められている。
また、重大な副作用も確認され注意が必要だ。
14年に患者数の少ない悪性黒色腫で承認を受けたときは100mg当たり薬価約73万円で有った。17年2月から適応癌が拡大する中、厚労省は「緊急対応が必要」と働き約半分の36万円、18年4月から「薬価制度の抜本改革」で約28万円とどんどん値下げされている。
高額薬剤費の値下げは公的医療財政が悪化したための国の対策である。患者は1~3割負担や一定以上は高額医療費制度を利用できる。しかし、自己負担を超えた高額医療費をカバーするのは国民から集めた税金である。自己負担と公的負担そして命の価値をどう考えるか。財政悪化が叫ばれている中、難しい問題です。
週間ダイヤモンド編集部より引用