30.1.22

「ICTの利活用を推進、オンライン診察等の要件」

ICT技術が進展は目覚ましく、少し前には考えも付かなかったようなことが、一般家庭でも普通に利用されるようになってきています。例えばテレビ電話、かつては空想世界の技術でしたが、テレビ電話・会議システムは多くの会社で採用され、さらにスマートフォンを活用して誰でもテレビ電話を使える時代になってきました。中医協でも「ICTを活用した医療行為の診療報酬上の評価」が大きな論点となりました。
推進派の診療側と慎重派の支払側という構図で議論が対立していたかに見えましたが、両側の主張をきちんと吟味すれば「診療の基本は対面であり、ICTを活用した診療はそれを補助するものである」という認識には違いがなく、厚生労働省もこの基本認識に立って、制度設計を検討。オンラインで行う診察(再診、訪問診療など)や医学管理について、新たな診療報酬を設定する考えが提示しました。オンライン診察があくまで「対面診療の補助である」という点などを踏まえて、これを報酬で評価する、医療保険の適用対象とする前提は
(1)特定された疾患・患者である。
(2)一定期間継続的に対面診療を行っており、受診間隔が長すぎない。
(3)急変時に円滑に対面診療できる体制がある。
(4)安全性や有効性のエビデンスが確認されている(個別事例から判断)。
(5)事前に治療計画を作成している。
(6)医師と患者の両者の合意がある。
以上のような内容を含む一定のルールに沿った診療が行われていることと整理されました。
「慢性疾患に罹患し、外来治療や在宅医療が継続的に行われている患者について、再診や訪問診療の一部を『オンライン診察』に置き換える」といった形式での評価が念頭に置かれオンライン診察は「外来」と「訪問診療」との中間というイメージで、報酬水準は「対面診察」>「オンライン診察」>「電話再診」と設定されることになるでしょう。厚労省は、さらに進めて「オンライン医学管理」を診療報酬で評価する考えも示しています。例えば高血圧や糖尿病の患者について、外来での再診に加えて、患者の同意の下に治療計画を策定し、この計画に基づいた生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合には生活習慣病管理料を算定できます。高血圧で毎月1回外来を受診し、生活習慣病管理料を算定している患者Aについて、状態が安定してきたため「毎月1回の外来通院(再診)を、『2か月に一度の外来通院(再診)と、2か月の一度のオンライン診察』に切り替えよう」と医師が判断したとします。その場合、2か月に一度の外来通院に際しては「再診料と生活習慣病管理料を算定」し、2か月に一度のオンライン診察に際しては「オンライン診察料とオンライン生活習慣病管理料を算定」できる、といった形が検討されます。
外来でのオンライン診察・医学管理の想定ケース例(1)
慢性疾患で在宅療養をしている患者について、毎月1回以上の訪問診療を行うとともに、個別の患者ごとに総合的な在宅療養計画を作成し、総合的な医学管理を行った場合には在宅時医学総合管理料(いわゆる在総管)を算定できます。毎月2回の訪問診療を受けている患者Bについて、状態が安定してきたため「毎月2回の在宅医療を、『1か月に一度の在宅医療と、1か月の一度のオンライン診察』に切り替えよう」と医師が判断したとします。その場合、1か月に一度の在宅医療に際しては「在宅患者訪問診療料と在総管を算定」し、1か月に一度のオンライン診察に際しては「オンライン診察料を算定」(このケースでは、在総管を算定しているので、オンライン在総管は算定不可)できる、といった形が検討されます。

在宅でのオンライン診察・医学管理の想定ケース例(2)
また、オンライン診察、オンライン医学管理の評価は初の試みとなるため、まず「1か月に1回まで」という算定上限が設けられます。これは不適切な報酬算定の予防にもつながります。なおオンライン診察で医薬品を処方する場合、「処方箋の原本を患者に郵送する」などの要件を満たせば、処方箋料の算定が可能となる見込みです。今後の「診察環境や使用機器の基準設定」「具体的な算定要件設定」などの議論に要注目です。

メディウォッチより引用