2017.12.15

「認知症の最大の原因、実は「耳」にあった 聴力低下が脳に及ぼす影響とは」

健康に長生きするために是非とも防ぎたいのが認知症です。2017年7月、世界的な医学誌「ランセット」に、認知症の35%は生活習慣次第で予防できると記載されました。
喫煙、肥満、高血圧などが認知症の原因となりますが、最も認知症につながりやすい要因は、実は「耳」なのだそうです。
耳にはうずまき状の「蝸牛(かぎゅう)」という器官があり、内部には毛の生えた細胞「有毛細胞」があります。
毛はうずまきの外側から高い音、内側に向かうにつれ低い音に反応し、音の情報を電気信号に変えて脳に送ります。片耳だけで1万5000~2万個の有毛細胞があるそうです。
重要な毛ですが、一度抜けると二度と生えず、耳の入口に近い高音担当の毛ほどダメージを受けやすい弱点を持っています。
毛が抜ける主な理由は「体質」と「騒音」。髪の毛同様、歳とともに徐々に抜けてしまう人がいるほか、ヘッドホンから流れる大きな音や車の騒音などを何年も聞き続けると抜けやすくなります。若者の難聴が増えている米国では、ヘッドホンなどで60分以上音楽を聞かない、ボリュームを最大音量の60%より大きくしない「60:60セオリー」という言葉が使われています。
国際医療福祉大学三田病院 聴覚・人工内耳センター長の岩崎聡氏によると、母音は低めの音、子音は高めの音という傾向がある。例えば「ペンチ」という単語が、外側の毛が抜けていると、「天地(てんち)」「ベンチ」などと聞き間違えてしまう。母音の「え」は聞き取れるが、子音の「P」が聞き取れなくなるそうです。
蝸牛の血管はとても細く、血管の一部が傷付くと周辺の毛が抜けてしまいます。耳の血流を保つためにも、適度な運動が重要です。
米ジョンズ・ホプキンス大学のフランク・リン博士が、639人の脳を11年追跡調査し分析した結果、難聴の人の脳は音をつかさどる部分が萎縮していた、 との報告をしています。
思考や記憶にも重要な役割を果たす部分なので、それらの能力にも影響してしまいます。認知症リスクは、軽い難聴の人は1.89倍、中くらいの難聴で3倍、重い難聴で4.94倍にもなることがわかっています。
難聴を放置すると認知症の発症率が高くなるという研究報告はほかにも多数あります。人と会話すると、相手が何を話すか推測したり、自分が何と答えようか考えるので、脳が働いている状態を保ちます。つまり、聞こえが悪くなり人との会話が不足すると、認知症につながると考えられているのです。ただ、自分の耳に問題があるとはなかなか気付けないもので、耳から入ってくる情報が欠けていても、脳が前後の文脈や音のつながりから欠けた音を推測して穴埋めするため、ほとんど問題なく日常生活を送れてしまいます。 耳の衰えの早期発見のため、以下の項目をチェックしてみましょう。
(1) ふいに声をかけられると聞き取りづらい
(2) 人の名前(例:加藤と佐藤)を聞き間違える
(3) 車の音がしてもどこから来るかわからない
(4) 小声は聞き取りづらいが大声は異常に響く
当てはまるものがあったら、一度主治医に相談してみましょう。
認知症にはいろいろな原因がありますが、ならないための努力も非常に重要です。周りの環境に無関心にならず、聞くこと、話すことも年齢を重ねていくにつれて続けていくことが大切ですので、ぜひ、人との会話をあきらめないで、一生懸命聞く、話す努力をしていっていただきたいと思います。

JCASTニュースより引用